性的指向とは何か
性的指向とは、恋愛感情や性的な関心がどの性別の人に向かうか(または向かわないか)を表す概念です。英語では「Sexual Orientation」といい、SOGIEの「SO」に対応します。
性的指向は本人の意思で選んだり、変えたりできるものではないとされています。WHOや日本精神神経学会をはじめとする世界の医学・心理学の専門機関は、性的指向を「治療」しようとする試み(コンバージョンセラピー)を「有害で非科学的」と位置づけています。
性的指向の種類
自分とは異なる性別の人に恋愛的・性的関心を持つ。「ストレート」とも呼ばれる。
自分と同じ性別の人に恋愛的・性的関心を持つ。男性同士の場合「ゲイ」、女性同士の場合「レズビアン」と呼ぶことが多い。
複数の性別の人に恋愛的・性的関心を持つ。「どちらか決められない」ではなく、明確な性的指向のひとつ。
他者への性的な関心をほとんど、またはまったく感じない。恋愛感情はある場合もある(アロマンティックとは別の概念)。
相手の性別・性自認に関わらず惹かれる可能性がある。バイセクシュアルと近いが、性別という軸を意識しない点で異なるという人もいる。
自分の性的指向がまだ定まっていない、または模索している状態。これ自体が一つの性のあり方として尊重される。
性的指向と性自認の違い
最も多い混同が「ゲイの人は心が女性」「レズビアンの人は心が男性」というものです。これは誤りです。
| 概念 | 問い | 例 |
|---|---|---|
| 性的指向 | 誰を好きになるか | 「男性として、男性を好きになる」= ゲイ |
| 性自認 | 自分はどの性別か | 「出生時は男性と割り当てられたが、女性として生きている」= トランスジェンダー女性 |
ゲイの人の性自認は「男性」であることが多く、「心が女性だから男性を好きになる」わけではありません。性的指向と性自認は独立した別軸です。
よくある誤解を解く
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「性的指向は選択だ。努力すれば変えられる」科学的根拠がありません。WHO・日本精神神経学会などは「コンバージョンセラピー(性的指向を変えようとする治療)」を有害と認定しています。性的指向は本質的な属性であり、変えようとする試みは当事者の心身に深刻なダメージを与えます。
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「バイセクシュアルはどっちつかずで浮気しやすい」バイセクシュアルは「複数の性別に惹かれる可能性がある」という性的指向であり、同時に複数の人を好きになるわけでも、浮気性でもありません。誠実さや関係の安定性は性的指向と無関係です。
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「異性愛が普通で、それ以外は異常・病気」WHO・APA(アメリカ心理学会)などは同性愛を1970〜90年代に「疾患分類」から除外しています。同性愛・バイセクシュアル・アセクシュアルは、正常な性の多様性のひとつです。
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「アセクシュアルはただ性欲がないだけ」アセクシュアルは他者への「性的な引力(attraction)」をほとんど感じない性的指向であり、性欲の有無とは必ずしも一致しません。ホルモン異常や病気でもありません。
ロマンティック指向との違い
性的指向とは別に、「恋愛感情の向く先」を表す「ロマンティック指向」という概念があります。たとえば「性的な関心は女性に向くが、恋愛感情は男女どちらにも向く」という人もいます。アセクシュアルの人の中には「性的関心はないが恋愛感情はある(ロマンティック指向がある)」人も多くいます。
日常でできること
- 「彼氏いるの?」「彼女いるの?」ではなく「パートナーはいるの?」と聞く
- 「男同士で仲いいね」「女同士で仲いいね」という言葉に恋愛・性的な文脈を持ち込まない
- 誰かの性的指向を「見た目でわかる」と思い込まない
- 本人が話してくれたことを、同意なく第三者に話さない
出典・参考
- GLAAD Media Reference Guide
- Human Rights Campaign(HRC)Glossary
- WHO ICD-11(2019年)
- 日本精神神経学会「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」
- APA(アメリカ心理学会)「Sexual Orientation & Homosexuality」