パートナーシップ制度とは?
① パートナーシップ制度とは
パートナーシップ制度とは、自治体が同性カップル(自治体によっては異性の事実婚カップルも対象)の関係を公的に証明する制度です。宣誓書を提出し、自治体から「受領証」や「証明書」を受け取ることで、病院・住宅・職場の福利厚生などで関係を説明しやすくなります。
日本初の制度は2015年11月、渋谷区と世田谷区が同時に開始しました。その後、急速に広がり、2026年現在では人口カバー率は約93%に達しています。
大切なポイント:パートナーシップ制度は「自治体の内部規定(要綱)」に基づく制度です。法律上の婚姻とは異なり、宣誓によって法的な権利・義務は発生しません。
② 全国の普及状況(2026年現在)
虹色ダイバーシティ・渋谷区の共同調査によると、2025年5月末時点で532自治体が制度を導入し、登録件数は9,837組に達しています。都道府県単位での導入も33に上り、全都道府県のうち過半数で導入されました。
| 指標 | 数値(2025〜2026年時点) |
|---|---|
| 制度導入自治体数 | 532自治体以上(把握できていない自治体を含めると更に多い可能性あり) |
| 人口カバー率 | 約93% |
| 都道府県単位での導入数 | 33 |
| 累計登録組数 | 約9,837組(2025年5月末時点) |
| 制度開始年 | 2015年11月(渋谷区・世田谷区が全国初) |
2024年11月には「パートナーシップ制度自治体間連携ネットワーク」が発足し、加入自治体間で転居する際に手続きが大幅に簡素化されました。転入先の自治体に申告書を提出するだけで、一から手続きをやり直さずに制度を継続できます。
📍 お住まいの自治体を調べる:みんなのパートナーシップ制度やMarriage For All Japanで全国の導入自治体を検索できます。
③ できること・できないこと
パートナーシップ制度を活用すると、日常生活のいくつかの場面で役立てることができます。ただし、法律婚とは異なり、法的な権利・義務は生じません。
できること(対応が広がっている場面)
| 場面 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 🏥 医療・病院 | 手術同意・面会・病状説明への同席 | 各医療機関の判断による |
| 🏠 公営住宅 | 家族として入居申し込み | 多くの自治体で対応済み |
| 💼 職場の福利厚生 | 家族手当・慶弔休暇・育児休業など | 各企業の就業規則による |
| 🏡 民間賃貸住宅 | 同居・連帯保証人として認められやすくなる | 各不動産会社・大家の判断による |
| 📱 携帯電話・保険 | 家族割・生命保険の受取人指定 | 対応会社が拡大中 |
| 📝 住民票 | 続柄欄に「夫(未届)」等を記載できる自治体あり | 自治体によって異なる |
実際に役立つ使い方(現場レベル)
制度は万能ではありませんが、特定の場面では実務的に役立ちます。大切なのは「証明書があれば必ず通る」と考えるのではなく、使う場面ごとに事前確認をしておくことです。
| シーン | 使い方 | ポイント |
|---|---|---|
| 🏥 病院 | パートナーとして説明同席・面会を求める | 事前に病院へ確認すると通りやすい。緊急時に備えて証明書を持参すると安心 |
| 🏠 賃貸契約 | 同居人・家族に近い関係として説明する | 不動産会社・保証会社・大家による差が大きい |
| 🏢 職場 | 福利厚生・慶弔休暇・家族手当などの申請時に提示する | 制度対応企業のみ。就業規則や人事窓口で確認が必要 |
| 🪪 日常 | 関係性を説明する場面で提示する | トラブル回避や説明負担の軽減につながる |
できないこと(法律婚と異なる点)
| 項目 | 法律婚 | パートナーシップ制度 |
|---|---|---|
| 相続権 | あり | なし(遺言が必要) |
| 税制優遇(配偶者控除など) | あり | なし |
| 健康保険の扶養 | 可能 | 不可 |
| 遺族年金 | 受給可能 | 不可 |
| 親権・養子縁組 | 可能 | 制度上は不可(個別に養子縁組可) |
| 子どもの氏・戸籍 | 共有可 | 不可 |
| 離婚時の財産分与・慰謝料請求 | 可能 | 別途契約が必要 |
| 医療・住宅での関係証明 | 可能 | 対応先による |
⚠️ パートナーシップ制度だけでは相続・税制・年金などの法的権利は得られません。これらをカバーするには、公正証書・遺言・任意後見契約などの法的手続きを別途行う必要があります。→補完的な手段を見る
④ 申請手続きの流れ
申請の方法は自治体によって異なります(来庁・郵送・オンラインなど)。ここでは多くの自治体に共通する一般的な流れを紹介します。
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1お住まいの自治体に制度があるか確認する
市区町村のウェブサイト、または「みんなのパートナーシップ制度」などの検索サービスで確認しましょう。都道府県の制度のみの場合は、都道府県窓口への申請になります。
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2必要書類を準備する
下記「必要書類の目安」を参考にしてください。戸籍抄本や独身証明書の取得には時間がかかることがあるため、余裕をもって準備しましょう。
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3窓口に予約を入れる
多くの自治体では事前予約が必要です。電話・メール・オンラインフォームなどで宣誓日時を調整します。プライバシー保護のため個室で対応する自治体がほとんどです。
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4二人で窓口に行き、宣誓・届出を行う
書類を提出し、職員の前で宣誓書に署名します。本人確認と書類の確認が行われます。東京都などではオンライン手続きも可能です。
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5受領証(証明書)を受け取る
即日交付の自治体が多いですが、数日〜10日程度かかる場合もあります。受領証のほか、カードサイズの証明書を発行する自治体も増えています(東京都は2024年4月〜)。
必要書類の目安(自治体により異なります)
- 住民票の写し(発行から3か月以内のもの、お二人分)
- 戸籍抄本または独身証明書(配偶者がいないことを証明、お二人分)
- 本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
- 宣誓書(多くの場合、窓口で用意。事前に様式を取り寄せる場合も)
- ※外国籍の場合は婚姻要件具備証明書・日本語訳が必要な場合あり
費用:制度の申請自体は無料の自治体がほとんどです。ただし、住民票・戸籍抄本などの書類取得にかかる手数料(各数百円)は自己負担となります。
⑤ 主要自治体の制度比較
制度の細かい内容(対象範囲・手続き方法・ファミリーシップの有無など)は自治体ごとに異なります。代表的な自治体の特徴を紹介します。
- 開始
- 2022年11月
- 対象
- 性的マイノリティのカップル(一方が都内在住・在勤・在学)
- 手続き
- 原則オンライン申請。書類確認後、10日以内に受領証を発行
- 証明書
- A4サイズ+カードサイズを選択可(2024年4月〜)
- 特記
- 都内全自治体をカバー
- 開始
- 2020年10月
- 対象
- 性的マイノリティ(独自制度のある市は各市へ)
- 手続き
- 事前予約のうえ来庁(個室対応)。即日交付
- 特記
- 1日3組まで。プライバシーに配慮した運営
- 開始
- 各市で導入(2023年7月に県内全市町村で完了)
- 対象
- 性的マイノリティ・事実婚カップル(自治体による)
- 手続き
- 各市の窓口
- 特記
- 神奈川県全市町村での導入完了。利用可能サービス一覧あり
- 開始
- 2021年3月
- 対象
- 性的マイノリティ・異性の事実婚カップルも可
- 手続き
- 郵送でも申請可能(オンライン手続き対応)
- 特記
- 二人の戸籍上の性別を問わず申請可
自治体間連携ネットワークについて
2024年11月に発足した「パートナーシップ制度自治体間連携ネットワーク」に加入している自治体間で転居する場合、転入先自治体への申告書提出と本人確認だけで手続きが継続できます。2025年11月時点で全国の多数の府県・市町村が加入しています。
⚠️ 加入自治体であっても、各制度の細かい条件(同居要件の有無など)が異なる場合があります。転居を検討している方は、転入先の自治体に事前に確認しましょう。
⑥ 制度の落とし穴(ここ重要)
⚠️ よくある誤解:「パートナーシップ=結婚と同じ」ではありません。証明書は関係性を説明しやすくするためのもので、法律上の配偶者になる制度ではありません。
- 全国共通ではない(自治体ごとに条件や使える場面が違う)
- 民間サービスで必ず使えるとは限らない
- 相続・税制・年金は原則カバーされない
- 引っ越しで手続きが必要になる場合がある
- 「証明書があるから大丈夫」と思い込むと、いざという時に困ることがある
実務ポイント:パートナーシップ制度は入口です。相続・医療・財産管理まで考えるなら、遺言、公正証書、任意後見契約、保険受取人設定などを組み合わせる必要があります。
⑦ 法的に補完するための手段
パートナーシップ制度では相続・税制・医療同意などの法的効力は生じません。これらをカバーしたい場合は、以下の法的手段を組み合わせて活用することができます。専門家(公証人・弁護士・司法書士)への相談をおすすめします。
公正証書遺言
相続権のないパートナーに財産を遺すには遺言が不可欠です。公証人が作成する「公正証書遺言」は改ざんリスクが低く、有効性も高いためおすすめです。相続人の遺留分(最低限の取り分)にも配慮が必要です。
任意後見契約
認知症などで判断能力が低下した際に、パートナーに財産管理や医療・介護の決定を委任できる制度です。公正証書で作成し、あらかじめ受任者を指定しておく必要があります。
パートナーシップ合意契約
財産の管理・分担・別れたときの財産分与などをあらかじめ取り決めておく契約です。公正証書で作成すると証拠力が高まります。パートナーシップ制度の申請条件として求める自治体もあります。
死後事務委任契約
亡くなった後の葬儀・納骨・各種手続きをパートナーに委任する契約です。法定相続人がいても、これにより本人の希望を実現しやすくなります。
医療同意書・事前指示書
入院・手術・延命治療などについてパートナーへの説明や同意を求める書面です。法的拘束力は限定的ですが、医療機関への提示で対応を求めやすくなります。
養子縁組
相続権を確保する方法のひとつとして、パートナー間での養子縁組を選択するカップルもいます。ただし、親子という法的関係になるため、ライフプランに応じた慎重な検討が必要です。
費用の目安:公正証書の作成費用は内容にもよりますが、合意契約・遺言のシンプルな内容であれば1通あたり1万5千円前後が目安です。組み合わせる場合はその分費用が重なります。
⑧ 裁判・立法をめぐる最新動向
日本では現在、同性婚は法律上認められていません。一方で、「結婚の自由をすべての人に」訴訟(同性婚訴訟)が全国で提起され、2021年以降、各地で判決が出続けています。この動向はパートナーシップ制度の将来的な位置づけにも深く関わります。
訴訟の流れ(2021〜2026年)
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2021年3月
札幌地裁:同性婚を認めない民法規定は憲法14条(法の下の平等)に違反と初判断 違憲
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2024年3月
札幌高裁:憲法24条1項・2項および14条1項に違反。「同性間の婚姻の自由」も憲法上保障されると判断 違憲
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2024年10月
東京高裁(第一次訴訟):憲法24条2項・14条1項に違反 違憲
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2024年12月
福岡高裁:憲法13条(幸福追求権)・14条1項・24条2項に違反。「婚姻は幸福追求権として保障された具体的な権利」と明示 違憲
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2025年3月
名古屋高裁・大阪高裁:いずれも憲法14条1項・24条2項に違反と判断。大阪高裁は「別制度ではなく婚姻制度そのものを認めるべき」と指摘 違憲
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2025年11月
東京高裁(第二次訴訟):唯一の「合憲」判断。ただし「このまま続けば将来的に違憲が生じることは避けられない」とも言及 合憲
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2026年3月
最高裁大法廷:「結婚の自由をすべての人に」訴訟を大法廷で審理することを決定。2027年初旬に判決が見込まれる 最高裁大法廷へ
高裁5件のうち4件で違憲判断が出るという異例の事態を受け、日弁連も繰り返し速やかな法制化を求める声明を出しています。一方で政府は「最高裁の判断を注視する」という姿勢をとっており、2027年の最高裁判決が大きな注目点となっています。
📌 日本はG7唯一、同性カップルの法的関係を認めていない国です。2023年に成立した「LGBT理解増進法」では差別禁止の明記や同性婚の法的保障はありませんでした。
⑨ よくある質問
Q. 異性カップル(事実婚)でも申請できますか?
自治体によります。兵庫県・渋谷区など一部では異性の事実婚カップルも対象です。一方、「一方または双方が性的マイノリティ」を要件とする自治体も多くあります。申請前にお住まいの自治体に確認しましょう。
Q. 引っ越したら手続きはやり直しですか?
「パートナーシップ制度自治体間連携ネットワーク」に加入している自治体への転居であれば、申告書と本人確認書類の提出だけで手続きを継続できます(戸籍抄本などは不要)。加入自治体かどうかは転入先の自治体に確認してください。
Q. 外国籍のパートナーでも申請できますか?
国籍を問わない自治体がほとんどです。ただし、配偶者がいないことを証明する書類(婚姻要件具備証明書など)の提出が必要で、書類に日本語訳が求められる場合があります。
Q. 宣誓したことは周囲に知られますか?
手続きは個室で行われ、プライバシーに配慮されています。住民票の続柄欄への記載は希望制の自治体が多く、強制的に周囲に知られることはありません。
Q. 解消するにはどうすればいいですか?
関係が解消された場合、受領証の返還届を自治体に提出します。引越しや要件を満たさなくなった場合も同様に手続きが必要です。手続きの詳細は各自治体の規定を確認してください。